AKEBONO REPORT 2013
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ブレーキパッドの実験評価を担当しています。akebonoがめざす「GPF」「C&S+t」は実験の立場からも大きなチャレンジです。その第一歩として2012年には実験G5(G5=日本、北米、欧州、中国、インドネシア)活動が始まりました。実験G5活動には、世界各地の開発拠点でその時差を利用して開発スピードを上げるという狙いがあります。そのためには実験プロセスを共通化・標準化し、さらにグローバルレベルでの情報共有とコミュニケーションの構築が必要です。 一方で、試験をパスした製品がお客様によって不具合を指摘される場合があり、その原因を解析し、限りなくゼロに近づけることも必要な取り組みです。「akebonoの試験をクリアしていれば問題ない」と言われる信頼性の高い評価コードを作ることが喫緊のテーマです。 実験部も含め、現在の組織は「摩擦材」と「機構」に分かれていますが、お客様からみれば同じブレーキです。ブレーキのことなら何でも理解し、対応できる技術者になりたいと思っています。また、そうした人を育てることも組織の強化には必要と思っています。今後もさまざまな経験を積み上げ、総合的な知識を身に付けた技術者になることをめざしています。「akebonoの最先端を担う」――高性能車用ブレーキ、次世代ブレーキの開発akebonoはモータースポーツで培った技術に基づく高性能車用ブレーキの開発のほか、次世代のブレーキシステムや、近未来を見据えた摩擦材の基礎研究などに意欲的に取り組んでいます。野口 哲弥(のぐち てつや)2001年入社VCET (Vision Creative Engineering Team)“これまでになかった機能を持つブレーキを作り、潜在的ニーズを掘り起こしたい” 2007年から約5年間、英国のAkebono Advanced Engineering(AAE)に在籍し、F1用ブレーキの開発に携わっていました。現在はVCETで、F1用ブレーキをはじめとして、市販のスーパースポーツカーなど、ハイエンド車向け製品の開発を担当しています。 VCETは、akebonoがブレーキエキスパートになるべく設立された部署です。その役割のひとつであるF1用ブレーキの開発と提供は、akebonoのブランド力強化のほか、現場での問題解決能力を育て、モチベーションを向上させる意味で人財育成にも役立っています。また、絶え間ない開発競争の中で培った技術ノウハウと開発スピードは、将来に向けた技術の差別化にもつながります。持てる技術力や信頼性を欧州のトップブランドにアピールする効果も見逃せません。 軽量化や冷却性などの性能向上は今後ますます重要視されるようになります。これまでにできなかった超高性能なブレーキを開発し、その技術が量産に展開されることで潜在的ニーズを掘り起こすことが現在の目標です。 コーポレート・ブランディング活動にも参加していますので、「さりげない安心と感動する制動を」というブランドスローガンを各部署に展開し、日々の業務がakebonoのブランド価値を高めていくという意識を社内に浸透させたいと思っています。「評価の立場から業務プロセスを改善する」――実験解析という仕事設計開発した製品の性能を評価するのが実験解析部です。「C&S+t」に対しても試験項目の共通化や世界各地の拠点で対応できる評価システムの構築に向け、積極的な提案をしています。阿部 信恵(あべ のぶえ)2005年入社開発部門 実験解析部 摩擦材適用実験課“ 開発設計者とやりとりしながら、開発・設計プロセスのスピード化と省力化を図りたい” 実験解析部で開発中の摩擦材の評価を担当しています。実際の車に装着する前段階における試験機での評価とその結果の解析が主業務です。「鳴き」「振動」といった官能評価、環境性能や耐久性の評価を経て、合格した製品がAi-Ring(テストコース)での実車評価に進みます。 試験は合格するまで複数回行われます。作業ステップを減らし、開発期間を短縮することが必要ですが、耐久性のテストだけは時間短縮できないため、その両立が苦心するところです。また、数値結果をどう開発設計者にフィードバックするかも工夫が必要な点です。判断材料はあくまで試験機が出した数値ですが、これをもとに視覚的に理解しやすいグラフやイラスト、写真や動画を駆使して報告書を作っています。評価の項目もお客様によって異なるため、開発設計者のニーズを満たす評価の条件を考え、適切な評価項目を提案することもあります。 評価試験は非常にコストがかかるため、開発設計者とのコミュニケーションをとり、最小限の試験実施で済むよう心がけています。また、開発設計者が試験依頼前に参照できるデータシステムも作成中です。 今後の取り組みとして「環境にも、人にも優しい」実験装置を作ることを考えています。特に治具(じぐ(注3))を取り扱う際の作業者への体の負担が気がかりです。ひとつ10 ~ 15kgもある治具の扱いは負担が大きいため、可能な限り段差を無くし負担を軽減する、さらに治具を探す手間を削減するなどの改善を進めたいと思っています。中沢 信(なかざわ しん)2006年入社開発部門 実験解析部 摩擦材適用実験課“ 世界のどこでも絶対的な信頼を持たれるような評価プロセスを確立したい”

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