AKEBONO REPORT 2013
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長谷川 英之(はせがわ ひでゆき)2006年入社開発部門 モジュールプロジェクト“キャリパー、パッド、ローターを組み合わせて検証し、ブレーキメカニズムの解明につなげたい” 入社当初は鉄道車両用アルミ製ブレーキローターの開発に携わり、自動車用ローターの開発に移って2年目になります。現在所属するモジュールプロジェクトのテーマは、akebono主力製品であるキャリパーとブレーキパッドに、ローターを加えた「3点セット」で納入できるようにすることです。 akebonoが3点セットをお客様に提供することは、ブレーキ性能をトータルで制御でき、品質を底上げできるメリットがあります。ローターに関する問題は、調達できる鋳物材料の微量成分や加工機械が国・地域、サプライヤーによって異なる点です。ローターの素材である鋳鉄は、スクラップ材を原料としますが、主成分以外の微量成分は、調達地域ごとにバラつきがありますし、サプライヤーによって摺動面の仕上げ加工の方法にも違いがあります。これが、ブレーキ性能が必ずしも同じにならない原因になっています。「C&S+t」を進めるために、まず製造工程のさまざまな「違い」が、「効き」「鳴き」にどう影響するのかを検証し、グローバルで同じ摩擦性能を提供できる技術を確立していく予定です。 今後、ハイブリッド車、電気自動車などの普及につれて回生ブレーキが主流になり、摩擦ブレーキに求められる役割、性能は時代とともに移り変わっていくと考えています。こうしたトレンドを的確にキャッチし、常にニーズに合った製品を送り出すためにも、ローターを含めた3点セットの基礎技術を確立していくことが必要と考えています。“ブレーキ技術の基礎研究を極めることで、「akebonoのコア技術」を強化したい” ㈱曙ブレーキ中央技術研究所( 中研)は、基礎研究やシーズの開発を担う立場から、「akebonoにとってのコア技術とは何か?」を問い続けています。 現在の重点的なテーマは、摩擦材のための独自材料の創製です。材料メーカーから提示されたものを使用するだけでなく、材料そのものを自分たちで生み出すことができれば、大きなアドバンテージになります。その際の課題のひとつが粒径、組成など材料や摩擦材の粒子形状を自在に制御することです。また、粒子形状などの材料の特性と実際の摩擦性能とが、どのような相関をもっているか解明することも課題です。この2つの研究を進めることで、狙い通りの性能を持った摩擦材を自由に製造することが可能になるはずです。他社との技術の差別化を図るため、また、今後の環境規制なども考慮しながら、複合材料を組み合わせた場合のシミュレーション技術を高め、今後も研究を積み重ねていきます。 また、摩擦材の基礎研究のかたわら、多角的な観点からブレーキ・摩擦材の性能を評価し、ブレーキ以外での用途についても可能性を探っています。 2020年に向けて、私たちはコアになる基礎的な知識と技術力を強化し、本社の開発設計者から要請を受けた際に、すぐ情報を提供できる存在になりたいと思っています。「世界のどこでも共通の生産プロセスを実現」――生産設備の設計生産設備の設計においても「世界共通品質の実現」は大きな課題です。また、世界のどこでも簡単に運営・メンテナンスできることも重要なポイントとなっています。青木 純(あおき じゅん)2009年入社生産技術部門 機構生技部 機構生技開発課“メンテナンス性も考えながら、生産設備の自働化を進め、「GPF」構築に貢献したい” 機構生技開発課で生産設備の設計とその試験運転を担当しています。現在は、2013年度の基軸プログラムの1つである、高性能キャリパーの生産設備の設計開発が進行中です。この機械の中子(なかご(注4))は、今回初めてakebonoで内製することになりました。 一方で2020年に向けた取り組みとしては、生産工程の自働化の観点から、「段取りレス」「自動段替え」を実現するべく、研究と設備の試作を行っています。自働化を進める際の課題は部品形状の多様化ですが、「C&S+t」の考え方に基づき、部品そのものの共通化・標準化を進めるため、私たちの部署では部品の組み付け時に起きていることを観察・データ化し、どのような形状ならハンドリングしやすいかを製品開発者にフィードバックしています。また、お客様の要求レベルが年々上がる中、品質を担保する生産設備を作ると同時に、それを維持管理していくことも重要です。そこで、品質保証テストなどの記録と実際の製品・性能とを結び付け、また、お客様からのフィードバックも含めた、データの管理を徹底しようとしています。“日本のモノづくり”を残すため、また、「GPF」を構築するため、今後はそもそも不良品を出さない機械を作ることが目標です。また、生産設備のメンテナンス性を高めるため保全データを蓄積し、現場で現物を現認しながら、改善を図っていきたいと思います。(注1) 鳴き:パッドとローターの摩擦によって発生する振動がキャリパーなどに伝わり、ブレーキ全体が共振して音が発生する現象を指す(注2) 引きずり:ディスクブレーキのパッドとローターが構造上常に接触していることによってローターの回転抵抗となる現象を指す(注3) 治具( じぐ):工作物を固定し、工具の制御や案内を行う補助的な道具・装置の総称。ここでは実験装置と実験対象物との橋渡しをする部分を指す(注4) 中子( なかご):中空部分をもつ鋳物を製作するときに使う鋳型の一部分で、外型と組み合わせてその中に入れる中型を指す

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