AKEBONO REPORT 2017
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銅フリーパッドMR流体ブレーキ(試作品)とそれを搭載した超小型モビリティMR流体を使ったブレーキの原理磁場=0油などの液体中に強磁性体粒子(鉄粉)が分散されているMR流体磁場印加N極S極可動円盤可動円盤固定円盤固定円盤MR流体磁場が作用すると磁性体粒子が互いにひきつけあい、鎖状クラスター(鎖状構造)を形成する片側の円盤が一定速度で平行に移動する際のせん断応力→この抵抗力がブレーキ力となる磁場>03サステナブル経営PART環境 | 環境負荷の低減E 開発での取り組み銅フリー摩擦材の開発と展開米国ワシントン州とカリフォルニア州では、ブレーキ摩擦材から排出される化学物質が河川や湾の生態系に影響を及ぼすことを防ぐために、自動車ブレーキ摩擦材に含有される化学物質規制に関する州法が発効されています。カリフォルニア州では、2021年から銅の規制が始まり、2025年以降、銅含有率0.5%以上の摩擦材の新車組み付けが禁止となります。従来の摩擦材には、高温時の効きの安定性のために銅が使用されてきましたが、akebonoでは、銅フリー摩擦材を開発し、補修用としては2007年から、新車装着用としては2014年からお客様に納入しています。複数の素材を組み合わせることで、銅を使用する際と同等の性能をもたせ、コストも同等に抑えています。また、akebonoブランド補修用ブレーキパッドの約8割※は、銅含有量をカリフォルニア州の2025年規制値未満とすることを実現し、さらに今後規制の対象となる可能性のあるアンチモンのフリー化もいち早く達成しています。今後もワシントン州法への対応なども継続して、確実に法規対応していきます。※ 出荷枚数ベース摩耗粉を出さないMR流体ブレーキ中央技術研究所では、自動車の電動化への対応と地球環境に配慮した製品として、摩耗粉ゼロを実現する「MR 流体ブレーキ」の研究開発に取り組んでいます。MR流体(Magneto Rheological Fluid)とは、磁気に反応することで特性が液体から半固体へと変化する流体のことで、1960年代から研究されてきた機能性材料です。磁場を加えると、液体中に分散された粒径数ミクロンの強磁性体粒子(鉄粉)が磁界方向に整列して鎖状粒子クラスターを形成し、半固体化します。MR流体ブレーキは、車両に固定された円盤と、ハブベアリングと一緒に回転する円盤が交互に配置されている間にMR流体が充填される構造のブレーキです。ブレーキ内部に配置された電磁石のコイルに電流を流し、円盤と垂直の方向に磁界を発生させることで固定円盤と回転円盤の間に鎖状粒子クラスターができます。回転円盤は回転し続けているため、鎖状粒子クラスターがせん断変形を受け崩壊し、隣のクラスターとつながり、また崩壊するという現象が繰り返され、回転円盤に抵抗力が発生します。この抵抗力がブレーキ力となります。MR流体をブレーキに用いることによって、摩耗しないため摩耗粉が発生せず、環境負荷物質の排出を抑えることが可能となります。また、MR流体は磁場に数千分の1秒の速さで反応するため、俊敏かつ安定した制御が可能となります。さらに、電子制御装置で電圧(起磁力)を直接コントロールするため、あらかじめ設定された効きのパターンの中から、ユーザーが自分の好みのブレーキフィーリングを選べるようになります。akebonoは約3年前から、超小型モビリティを対象に研究開発を行い、2015年3月には試作品を完成させました。スマートシティやスマートモビリティに適合したスマートブレーキとして、2020年の実用化を目指し、実験(実走・台上)と改良を重ねています。● 材料の環境負荷物質調査● 欧州廃車指令への対応● 環境負荷物質の削減● VOCの削減● 欧州REACH規制への対応● 北米化学物質規制への対応● 各国法規への対応31 AKEBONO REPORT 2017

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