AKEBONO REPORT 2018
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中長期成長モデルMR流体ブレーキ(試作品)とそれを搭載した超小型モビリティMR流体を使ったブレーキの原理磁場=0油などの液体中に強磁性体粒子(鉄粉)が分散されているMR流体磁場印加N極S極可動円盤可動円盤固定円盤固定円盤MR流体磁場が作用すると磁性体粒子が互いにひきつけあい、鎖状クラスター(鎖状構造)を形成する片側の円盤が一定速度で平行に移動する際のせん断応力→この抵抗力がブレーキ力となる磁場>0次世代技術への展開–2次世代電動・高性能ブレーキ 1:「次世代ブレーキ」電動ブレーキシステムとは運転者の操作からブレーキがかかるまでに動作する装置や、装置間の接続部の中で、電気を動力として動作するものが含まれているシステムです。特長として油圧配管が不要になるため、車両の軽量化による燃費向上に貢献するとともに、メンテナンスなどで廃液処理されるブレーキフルードが不要となり、環境保全にも貢献します。電動ブレーキの種類電動機械式サービスブレーキディスクブレーキパッドをブレーキローターに押しつける機構を電動化したブレーキシステムです。走行中にブレーキペダルを踏むと電気信号が発生し、ブレーキキャリパーに組み込まれたモーターが作動して、車輪にブレーキがかかります。細かい動きもソフトウェアのプログラミングによって制御できるため、安全性や快適性が向上します。電動パーキングブレーキパーキングブレーキ(駐車ブレーキ)を電動で作動させるブレーキシステムです。操作に力が必要となる従来のパーキングレバーに代わり、スイッチやアクセルによってパーキングブレーキを操作することができるため、ドライバーの運転負荷が軽減します。電子制御装置(ECU)で制御するため、パーキングブレーキのかけ忘れ防止にも役立ち、安全性が向上します。低引きずりキャリパー低引きずりキャリパーはパッドとローターの隙間をミクロン単位で最適化したブレーキです。ブレーキ解除時のパッドとローターの接触による回転抵抗を減少させることで、自動車の燃費向上に寄与します。摩耗粉を出さないMR流体ブレーキ中央技術研究所では、自動車の電動化への対応と地球環境に配慮した製品として、摩耗粉ゼロを実現する「MR 流体ブレーキ」の研究開発に取り組んでいます。MR流体(Magneto Rheological Fluid)とは、磁気に反応することで特性が液体から半固体へと変化する流体のことで、1960年代から研究されてきた機能性材料です。磁場を加えると、液体中に分散された粒径数ミクロンの強磁性体粒子(鉄粉)が磁界方向に整列して鎖状粒子クラスターを形成し、半固体化します。MR流体ブレーキは、車両に固定された円盤と、ハブベアリングと一緒に回転する円盤が交互に配置されている間にMR流体が充填される構造のブレーキです。ブレーキ内部に配置された電磁石のコイルに電流を流し、円盤と垂直の方向に磁界を発生させることで固定円盤と回転円盤の間に鎖状粒子クラスターができます。回転円盤は回転し続けているため、鎖状粒子クラスターがせん断変形を受け崩壊し、隣のクラスターとつながり、また崩壊するという現象が繰り返され、回転円盤に抵抗力が発生します。この抵抗力がブレーキ力となります。MR流体をブレーキに用いることによって、摩耗しないため摩耗粉が発生せず、環境負荷物質の排出を抑えることが可能となります。また、MR流体は磁場に数千分の1秒の速さで反応するため、俊敏かつ安定した制御が可能となります。さらに、電子制御装置で電圧(起磁力)を直接コントロールするため、あらかじめ設定された効きのパターンの中から、ユーザーが自分の好みのブレーキフィーリングを選べるようになります。akebonoは東北大学流体科学研究所(中野政身教授)と共同で超小型モビリティを対象に研究開発し、2015年3月に試作品を完成しました。スマートシティやスマートモビリティに適合したスマートブレーキとして、2020年の実用化を目指し、試験(実走・台上)と改良を重ねています。電動ブレーキ低引きずりキャリパーAKEBONO REPORT 2018 18

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