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対処すべき課題

1.事業再生計画について

当社は、2019年9月18日付「『事業再生計画』の株式会社東京証券取引所への提出に関するお知らせ」にて公表したとおり、産業競争力強化法に基づく特定認証紛争解決手続(事業再生ADR手続)の中で全てのお取引金融機関からご同意いただいた事業再生計画に沿って、事業再構築のための各施策に取り組んでまいりました。その結果、売上高は、当初は事業再生計画における数値計画を若干下回っておりましたが、2022年3月期以降は数値計画を達成いたしました。営業利益は、2020年3月期は数値計画を達成し、その後は各施策を着実に実行いたしましたが、事業再生計画の中で想定していなかった新型コロナウイルス感染症の影響や半導体不足による受注変動影響、原材料価格・エネルギーコストの市況高騰影響などを受けて大幅な未達という結果となりました。

事業再生計画値と実績(億円)

2019年3月期から2024年3月期の営業利益増減要因(億円)

各地域セグメントにおける事業構造改革重点施策の現況

日本

本社間接部門を対象とする早期退職措置に伴う人員適正化、経費削減、設備投資及び開発費の抑制並びに生産性改善、合理化などのコスト削減、工場再編に取り組みました。なお、事業再生計画においては、曙ブレーキ山陽製造株式会社を段階的に縮小・閉鎖し、PT. Akebono Brake Astra Indonesia(インドネシア)への生産移管を計画していましたが、設備移管に想定を上回る費用が発生することが判明したことなどから、国内4工場の生産最適化による生産性改善及び固定費の削減へと計画を変更いたしました。この変更計画に基づく国内工場間の生産移管は2022年10月に、生産人員適正化は2023年3月に完了しております。

北米

事業再生計画どおりAkebono Brake, Columbia Plant(米国サウスカロライナ州)及びAkebono Brake, Clarksville Plant (米国テネシー州)の2工場の閉鎖をそれぞれ2020年8月及び同年9月に完了いたしました。また、米国1工場化には想定以上に費用がかかることから米国2工場体制の維持を模索していましたが、近年、米国による著しいインフレに伴う労務費及び原材料・エネルギーコストの高騰などの影響が看過できない水準に達したことから2023年10月20日付公表のとおりAkebono Brake, Elizabethtown Plant(米国ケンタッキー州)の閉鎖を決定いたしました。生産終了時期は、2025年12月を予定しております。

欧州

フランスの生産・開発拠点Akebono Europe S.A.S.は、予定通り2022年6月末に解散しております。スロバキアの生産拠点Akebono Brake Slovakia s.r.o.につきましては、当社に損失が生じない形での提携又は売却の実施若しくは閉鎖を、また、ドイツの営業・開発支援会社Akebono Europe GmbHにつきましては、Akebono Europe S.A.S.及びAkebono Brake Slovakia s.r.o.の進捗に合わせた閉鎖を予定していましたが、当社の技術力を活用したハイパフォーマンス事業に集中する事により営業利益の黒字化が実現されたこと及び将来の新規受注の可能性が高いことから当初計画を変更し、これらの2拠点の存続を決定いたしました。

アジア

中国においては、高性能・高級車の需要増に対し、当社技術力・ブランド力を活用した販売拡大を目指しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大、半導体不足、中国市場における急速なEV化及び日系主要完成車メーカーの販売不振などの影響により、大幅な売上減少という結果となりました。このような状況を挽回するため、中国系完成車メーカーに対して、主として高付加価値製品の拡販展開を鋭意実施しております。

2.事業再生計画期間終了後の見通しについて

自動車産業においては、新型コロナウイルス感染症の収束や半導体不足の解消などにより、自動車の生産・販売は回復基調にあるものの、車両の電動化が急速に進展し、産業構造が大きく変革しつつあります。加えて、世界経済を牽引していた中国経済の鈍化、世界的なインフレ抑制策としての金利引き上げに伴う景気後退の懸念や、貿易摩擦による国際関係の緊張・地域紛争等の地政学的リスクの増大による世界経済への影響などにより、当社を取り巻く事業環境は依然として先行き不透明な状況が続くことが想定されます。

このような状況下ではありますが、当社グループは、事業再生計画における数値計画を一部達成できなかったことを真摯に受け止め、その主要因のひとつであった北米事業の再構築の完了を最優先課題と位置づけて、全社一丸となって米国1工場化の実現に向けて取り組んでまいります。また、財務基盤を一層強固なものとし、将来の収益性を強化するため、事業ポートフォリオを見直し高収益事業領域へのリソース配分を高め、技術、品質、人財を向上させることにより、将来の持続的成長に向けた事業基盤の再構築に邁進してまいります。

当社グループは、企業理念「『摩擦と振動、その制御と解析』により、ひとつひとつのいのちを守り、育み、支え続けて行きます。」のもと、グローバル・モビリティ産業の中で、変化を恐れず、社会・顧客のニーズをつかみ、当社グループならではの課題解決・技術開発によって安心・安全を提供し続けることにより、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、当社グループの中長期的な企業価値の向上と将来の持続的成長を目指してまいります。

3.一部製品の定期検査報告における不適切行為再発防止策の進捗について

当社は、2021年2月16日付「当社国内生産子会社が製造する一部製品の定期検査報告における不適切な行為について」にて、「不適切行為の事実の全容」及び「具体的な再発防止策」を公表いたしました。再発防止策につきましては代表取締役を委員長とする「全社風土改革委員会」を同年3月1日付で設け、同委員会のもと、「組織体制の見直し・監査機能の強化」、「人の手が介在できないIT検査システムの導入」、「検査内容・検査項目の見直し」、「品質教育・コンプライアンス教育の強化」、「風土改革・意識改革」の5つの分科会を設置し、再発防止のための具体的な施策を推進しております。さらに、2024年1月からCQO(Chief Quality Officer)を設置しており、今後も品質保証体制の一層の強化に取り組んでまいります。