自動車の基本の動きは、「走る」「曲がる」「止まる」の3つ。このうち、安全にとって特に重要度の高い機能といえるのが「止まる」です。「ブレーキ」は、この「止まる」という働きを担っています。自動車を「減速し、止める」のがブレーキの働き。さらにブレーキの中には、止まっている自動車を動かないようにする、パーキングブレーキ(駐車ブレーキ)もあります。
「ブレーキ」は、安全・安心を守るためになくてはならない、自動車の重要保安部品のひとつです。
ブレーキは、走っている自動車の運動エネルギーを熱エネルギーに変えて、その熱を放出することにより、自動車を減速・停止します。
運動エネルギーを熱エネルギーに変えるのは、摩擦の力。
摩擦とは、動いているもの同士が接触することによって生じる抵抗力のことです。
時速100kmで走る自動車が急ブレーキをかけると、0℃の水2リットルが3秒で100℃に沸騰するほどの熱が放出されます。
耐熱性や放熱性の高さも、ブレーキに求められる性能のうちのひとつです。
ブレーキは自動車の4つの車輪全てについています。4つの車輪についているブレーキが、車輪と一緒に回転する回転体を摩擦の力で止めます。この自動車を減速・停止させる力は「制動力」と呼ばれています。
足元のブレーキペダルを踏んだ力は、ブレーキブースター(倍力装置)で力を増し、マスターシリンダーによって液圧(油圧)に変換されます。その圧力は、ブレーキオイル(ブレーキフルード)で満たされている配管を通って伝わり、車輪に装着されたブレーキに届きます。その届く力は、踏んだ力のおよそ30倍。15kgでブレーキペダルを踏んだ力は、およそ450kgの制動力となってブレーキを作動させます。
運転することを楽しむスポーツカーや、利便性の高いコンパクトカー、車体の大きいSUV(スポーツ用多目的車)や、さらに車体の大きいトラックなど、自動車には様々な種類があります。これらの車両には、その用途や性格に応じて選ばれた、ディスクブレーキ、またはドラムブレーキが装着されています。
ディスクブレーキは、車輪と一緒に回転する回転体であるディスクローターを、ブレーキパッドと呼ばれる摩擦材ではさんで止める仕組み。
ドラムブレーキは、車輪と一緒に回転する回転体であるブレーキドラムに、ブレーキライニングと呼ばれる摩擦材を内側から押しつけて止める仕組みです。
ディスクブレーキとドラムブレーキには、それぞれに利点・特徴があります。
前輪、後輪ともディスクブレーキが使われているもの、前輪、後輪ともドラムブレーキのもの、前輪と後輪とでディスクブレーキとドラムブレーキを使い分けているものなど、さまざまな組み合わせがあります。
どのような場合でも十分な制動力を発揮すること、制動力が安定していることが、ブレーキに必要とされる基本性能です。
さらに、ブレーキには、十分な強度を持っていること、繰り返しの使用に耐えられる耐久性があること、使用する環境条件に適合できること、といった信頼性が求められます。また、ただブレーキが効くだけではなく、ペダルフィーリングが良いこと、ノイズや振動が出ないこと、ブレーキのデザインが良いこと、といった感覚的な性能も求められます。
燃費に影響を与える、引きずり*1という現象が小さいことやブレーキの重量が軽いこと、摩擦材の製品寿命が長いこと、といった経済性も求められます。
製造する側にとっては造りやすいこと、さらに整備しやすいことや、低コストであることも大事な要素です。
摩耗粉 *2の削減といったような、環境への負荷を減らすことも重要な課題となっています。akebonoでは、これらの要求に応えるため、各種実験を繰り返し行い、日々開発に励んでいます。
akebonoは、乗用車用をはじめとして、新幹線、在来線、地下鉄などの鉄道車両用、フォークリフトやクレーンなどの産業機械用など、さまざまな用途のブレーキを開発・製造しています。
用途によって、ブレーキに求められる性能はさまざまです。求められる性能やコストによって、ブレーキの材質や大きさ、そして重さも異なります。
一般的な乗用車の前輪に用いられるディスクブレーキは、鋳鉄製のもので、ひとつおよそ6~7kgあります。それに対し、重たい車両やスピードの速い車両を止めるためには、より大きく重たいブレーキが必要とされます。akebonoで製造している中で最も重いブレーキは、建設現場や工事現場で使用される重ダンプカー(重ダンプトラック)用のブレーキです。車輪の直径が3m以上もある重ダンプは、ブレーキひとつの重さが120kgを超えます。大人が4人がかりでやっと持ち上げられる重さです。
ブレーキの中でも比較的軽量な、バイク用ブレーキの重さは、一般的なものでおよそ600g。重ダンプカー用とバイク用では、およそ200倍もの差があります。重ダンプのような重量のある車両を安全・安心に止めるためには、これ程大きく重たいブレーキが必要とされるのです。
しかしながら、ブレーキは、止める力、制動力を増すために、ただ大きく重くすればいいというわけではありません。
自動車用のブレーキは、燃費向上、環境対応のため、軽量化が求められます。ブレーキの開発・製造には、ブレーキの剛性を保ちながら軽量化する技術がとても重要となります。特にスピードの速さを競うモータースポーツのレース車両では、ブレーキは極限までの小型化・軽量化が求められます。
akebonoは、お客様のニーズに合わせた製品の開発・製造を行っています。
自動車の快適性を損ねるものに、ブレーキの「鳴き」や「振動」と呼ばれる現象があります。ブレーキをかけたときにキーキーと音がしたり、振動を感じる現象です。自動車に乗っている人たちが不快に感じるこれらの要因を改善し、乗り心地をよくする技術は「NVH技術」と呼ばれています。
NVHは、Noise(ノイズ:鳴き)、Vibration(バイブレーション:振動)、Harshness(ハーシュネス:路面の凹凸による振動)の3つの単語の頭文字を取った言葉です。 水を入れたワイングラスのふちを、水で濡らした指でなぞると、グラスが共鳴(共振)して音(鳴き)が発生します。グラスの縁をなぞることによる摩擦で振動が発生し、水を入れたグラスに共鳴することにより、楽器のように音が鳴るのです。
ブレーキの鳴きや振動も、これと同じ原理です。パッドとローターの摩擦によって発生する振動がブレーキキャリパーなどに伝わり、ブレーキ全体が共振して鳴きが発生します。鳴きや振動の発生には、共振する部品の材質、形状に加え、走行環境、走行速度、ブレーキの温度など、さまざまな要因が影響します。
ブレーキをつくる上では、鳴きや振動をいかにコントロールできるかがとても重要です。
akebonoでは、より良いブレーキづくりを目指して、NVH制御技術の向上に日々取り組んでいます。